孫への生前贈与と相続税|110万円の基礎控除と7年以内の加算ルール

孫への生前贈与と相続税|110万円の基礎控除と7年以内の加算ルール

祖父母から孫への生前贈与は、ルールを取り違えると申告漏れや想定外の相続税につながります。とくに間違えやすいのは、110万円の基礎控除は「もらった人」ごとに1年分を合計して数えることと、亡くなる前の贈与を相続税に加算する期間が3年から7年へ延びていることの2点です。本記事では、国税庁タックスアンサーの記載にもとづいて、孫への贈与で押さえておきたい決まりを整理します。

贈与税の基礎控除110万円の数え方

暦年課税の贈与税は、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額から、基礎控除額110万円を差し引いた残りの額にかかります。合計額が110万円以下なら贈与税はかからず、申告も不要です(出典:国税庁 No.4402 贈与税がかかる場合・根拠法令:相続税法21条の5、租税特別措置法70条の2の4)。

ここでいう合計額は、贈与を受けた人が1年間にもらった財産の合計です。祖父と祖母の両方から同じ年に贈与を受けた場合は、2人からもらった額を足した金額から110万円を引きます。贈与する側の人数分だけ枠が増えるわけではありません(出典:国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税))。

孫の年齢で変わる贈与税の税率

110万円を超えた部分にかかる税率は、孫の年齢によって2種類に分かれます(出典:国税庁 No.4408)。

| 贈与を受けた年の1月1日時点の孫の年齢 | 使う速算表 | |------|------| | 18歳以上 | 特例贈与財産用(特例税率) | | 18歳未満 | 一般贈与財産用(一般税率) |

国税庁の計算例では、贈与財産の価額が500万円の場合、基礎控除後の課税価格は390万円で、贈与税額は特例税率なら48.5万円、一般税率なら53万円です(出典:国税庁 No.4408)。

亡くなる前の贈与は相続税に加算される

相続や遺贈などで財産を取得した人が、亡くなった人から一定の期間内に暦年課税の贈与を受けていた場合、その贈与財産の贈与時の価額を相続税の課税価格に加算します。この期間を「加算対象期間」といいます(出典:国税庁 No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)・根拠法令:相続税法19条、令和5年改正法附則19条)。

加算対象期間は相続開始日で決まる

令和6年1月1日以後の贈与から、加算対象期間は相続開始前7年以内に延びました。ただし一度に切り替わるのではなく、亡くなった日に応じて段階的に延びていきます(出典:国税庁 No.4161)。

| 亡くなった日(相続開始日) | 加算対象期間 | 出典 | |------|------|------| | 令和8年12月31日まで | 相続開始前3年以内 | 国税庁 No.4161 | | 令和9年1月1日から令和12年12月31日まで | 令和6年1月1日から亡くなった日までの間 | 国税庁 No.4161 | | 令和13年1月1日以後 | 相続開始前7年以内 | 国税庁 No.4161 |

110万円以下の贈与も加算される

加算対象期間内の贈与であれば、贈与税がかかったかどうかに関係なく加算します。基礎控除額110万円以下の贈与や、亡くなった年に受けた贈与も加算の対象です(出典:国税庁 No.4161)。

相続開始の日が令和9年1月2日以後の場合、加算対象期間内の贈与のうち相続開始前3年以内に受けたもの以外については、贈与時の価額の合計額から総額100万円までは加算されません(出典:国税庁 No.4161)。

贈与を加算した後の遺産が相続税の非課税枠に収まるかどうかは、相続税の基礎控除と計算方法の解説で確かめられます。贈与税の基礎控除とは別の枠なので、混同しないよう注意してください。

加算された贈与財産について贈与税を納めていた場合は、その贈与税額に相当する金額を相続税額から控除します。加算税、延滞税、利子税の額は控除に含まれません(出典:国税庁 No.4161)。

孫が加算の対象になるかどうか

加算の対象者は「相続等により財産を取得した人で、被相続人から加算対象期間内に暦年課税に係る贈与によって財産を取得した人」と定められています。「相続等」には、相続、遺贈、相続時精算課税に係る贈与が含まれます(出典:国税庁 No.4161)。

孫が遺言で財産を受け取る場合や、その祖父母からの贈与について相続時精算課税を選択している場合は、「相続等により財産を取得した人」に当たります。自分の家族の場合にどうなるかは、遺言の内容や過去の贈与の受け方で変わるため、税務署か税理士に確認してください。

加算しなくてよい贈与

亡くなった人から生前に受けた贈与でも、次の金額は加算する必要がありません(出典:国税庁 No.4161)。

  • 贈与税の配偶者控除の適用を受けた財産のうち、配偶者控除額に相当する金額
  • 直系尊属から贈与を受けた住宅取得等資金のうち、非課税の適用を受けた金額
  • 直系尊属から一括贈与を受けた教育資金のうち、非課税の適用を受けた金額
  • 直系尊属から一括贈与を受けた結婚・子育て資金のうち、非課税の適用を受けた金額

教育資金と結婚・子育て資金については、贈与者が亡くなった時点の管理残額が相続税の課税価格に加算される場合があります。

相続時精算課税という選択肢

贈与税の課税方法には、暦年課税のほかに相続時精算課税があります。原則として、贈与をした年の1月1日において60歳以上の父母または祖父母などから、贈与を受けた年の1月1日において18歳以上の子または孫などへの贈与で選択できる制度です(出典:国税庁 No.4103 相続時精算課税の選択)。

| 項目 | 内容 | |------|------| | 贈与税の計算 | 贈与者ごとに、1年間の贈与額から基礎控除額110万円と特別控除額(限度額2,500万円)を控除し、残りに一律20パーセントの税率をかける(出典:国税庁 No.4103) | | 基礎控除額110万円の適用 | 令和6年1月1日以後の贈与に限る(出典:国税庁 No.4103) | | 相続のとき | 贈与時の価額(令和6年1月1日以後の贈与は、年分ごとに基礎控除額を控除した残額)を相続財産に加算して相続税を計算し、納めた贈与税相当額を控除する | | 選択の手続き | 最初の贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに「相続時精算課税選択届出書」を税務署へ提出する | | 変更の可否 | 一度選択すると、その贈与者からの贈与は暦年課税へ変更できない |

暦年課税と違い、相続時精算課税は期間の区切りなく相続時に加算されますが、令和6年1月1日以後の贈与については年110万円の基礎控除額を控除した残額だけが加算されます。どちらが合うかは財産の額や贈与の計画によって変わります(出典:国税庁 No.4103)。

贈与税の申告と納税

1年間に贈与を受けた財産の合計額が110万円を超えた場合、贈与を受けた人が、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに申告と納税をします(出典:国税庁 No.4402)。

申告するのは財産をもらった人、つまり孫の側です。申告書はe-Taxで送信するほか、郵便や信書便で送る方法、税務署の時間外収受箱へ投函する方法で提出できます。提出先は、原則として贈与を受けた人の住所を所轄する税務署です(出典:国税庁 No.4429 贈与税の申告と納税)。

期限までに申告しなかった場合や、実際にもらった額より少ない額で申告した場合は、本来の税金のほかに加算税がかかります。納税が期限に遅れた場合は延滞税がかかります。

まとめ

  • 基礎控除110万円は、孫が1年間にもらった財産の合計額から引く。祖父母それぞれに枠があるわけではない
  • 税率は、贈与を受けた年の1月1日時点で孫が18歳以上かどうかで変わる
  • 亡くなる前の贈与を相続税に加算する期間は、相続開始日に応じて3年から7年へ段階的に延びている
  • 加算の対象者は、相続や遺贈などで財産を取得した人。孫が当てはまるかは遺言の内容や贈与の受け方による
  • 相続時精算課税は一度選ぶと暦年課税へ戻せない

本記事は制度の概要を整理したものです。贈与の金額や時期の判断は税額に直結するため、実行する前に税務署か税理士へ確認してください。孫への贈与を含む相続税対策の全体像については、相続税の無料相談はこちらでプロに相談することをおすすめします。

よくある質問(FAQ)

Q1: 孫の年齢によって贈与税の扱いは変わりますか?

A1: 変わります。贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上の孫が祖父母から受けた贈与には特例税率、18歳未満の場合は一般税率を使います。相続時精算課税を選択できるのも、贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上の場合です(出典:国税庁 No.4408、国税庁 No.4103)。

Q2: 毎年110万円以下の贈与なら、相続税には関係ありませんか?

A2: 関係する場合があります。相続や遺贈などで財産を取得した人については、加算対象期間内に受けた贈与は110万円以下でも相続税の課税価格に加算されます(出典:国税庁 No.4161)。

Q3: 贈与税の申告はどのように行いますか?

A3: 贈与を受けた人が、翌年2月1日から3月15日までに、e-Tax、郵送、税務署の時間外収受箱への投函のいずれかで申告書を提出します(出典:国税庁 No.4429)。

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